墨すり4 墨を磨る事
カスカスまで墨を磨ってください、と言っていますが、その理由です。精神論ではないです。
精神論だと、「書、画に向かうための心構えを作ること、そのお作法と時間」という事になろうかと思います。
カスカスまで磨るというのは、右の写真の状態を指します。
速く磨れる硯だと1分かからないと思います。この写真の方は丁寧に墨を磨られる方ですが、それでも和硯を使って2分程度なんじゃないかな?と思います。
カスカスまで固形墨を磨る意味の解説です。
結論を簡単に言えば、墨の色がよくなる、です。

固形墨を硯で磨る。その「磨る」の意味には2つの意味があります。
一つ目は、固形墨を薄くスライスする様に削ること、一般的な「磨る(削る)」です。
二つ目は、磨った墨液を「磨く(みがく)」事です。
一般的には、水に固形墨の煤を入れる事、つまり墨液を濃くする事に焦点があたります。目に見えやすい作業、行為です。また、一番時間がかかってメンドクサイを感じる部分でもあると思います。なので、速く墨が濃くなって欲しい、と思ってそこに目が行きます。
ですが、硯の機能として大事なのは、「磨る」ではなく「磨く」の方が大切です。墨液を粒度細かく、均質に磨いていく事です。それが、美しい墨色がでやすく、優雅な線や、キレ、冴えのある線が書きやすい墨液を作ります。
ただ、問題なのは、墨液を磨いているのが普通は目に見えない事です。磨けてるのか、磨けていないのか?一般的には見て判断はつかない。なので、あまり世の中的に言は気にされてはいない様に見えています。
最終的に、書けば(描けば)わかるんですけどね。
「人墨磨非 墨磨人」って言葉がありますが、うまく表現する人もいるものです。
一般的には、墨をすると人の心が磨かれる、と解釈されています。硯視点で見る私には少し違った意味に見えています。人が磨かれたら、見る眼がついて理解する事もできる、って事かな?っと思っています。
私が硯チューニングと称している作業。その「磨く」が出来る硯に硯を作り上げることを指しています。
管理人の自己紹介ページに書いている「墨が速くおりる、粒度細かく下りる、墨色がよい、墨が伸びる、運筆が良い、全て原理があります。石の特性と作り方で決まります。」は、そういう意味です。