墨すり3 固形墨の磨り方

墨すりのやり方は人によってさまざまあると思われます。
よく、病人の様に磨れ、とか、ゆっくり磨れとか、言われているのを聞きます。

例えで説明するより、原理原則で基本を考えた方がわかりやすいと考えています。

 1)固形墨は横に動かす
 2)下方向の力を加えない
 3)固形墨の磨り面(底面)に尖がった部分(90度以下角度)を作らない
を、基本原則と考えています。

磨り方
1)墨堂(丘)に500円玉大(2ml)の水を落とす
2)500円玉大の水の上で「の」の字を書くように固形墨を廻して磨る

 

 *墨池(池)に水をためて磨る方もおられますが、墨色が悪くなります。

 *最初の2~3周「の」の字は気持ちゆっくりめがよいです。水に固形墨をなじませる工程が必要です。その後、原理さえ出来ていれば速く磨っても問題ないです。

 *固形墨する際は、墨堂に押し付けるのではなく、墨堂から1mm程度墨を持ち上げて磨ってください。(疲れない程度に)

墨液がトロトロになるまで磨ってください。
出来れば、カスカス(磨っていて硯の面が見えるぐらい)まで磨って、適度な濃さに薄めてください。
右の写真がカスカスと呼んでいる状態です。
墨液の量が足りない場合は、カスカスかトロトロまで磨ってから、水を足して更に磨ってください。

カスカスからの薄める比率(目安)です。
超濃墨 1倍
濃墨  5倍
中墨  20倍
淡墨  50倍
超淡墨 100~300倍
 *書の方だと、中墨ぐらいを淡墨と言われている方も多いので、濃さを読み替えて使ってください。

固形墨の持ち方
お勧めできる方法を2点上げておきます。

1)側面持ち
固形墨を真っすぐ垂直に立てます。
底面にできるだけ近い部分を横から持ちます。墨の中央を親指と人差し指、中指、小指で挟む感じです。
*この方法だと、磨る際の硯と墨の接触力加減がわかりやすく、固形墨を1㎜程度浮かすとかのコントロールが出来ます。

2)上部持ち
固形墨の左右を親指と薬指で挟んで持ちます。
中指と人差し指は添えるだけで、硯の裏側を小指で支えます。
固形墨を硯より45度倒して磨ります。1㎜程度硯から固形墨を浮かす感じで磨るのがよいです。
固形墨の底面が底面の縁から半分程度になったら、固形墨の表裏を持ち換えて磨ります。
(目的は墨を表裏ですることによって、尖がった部分を作らない事です。底面が90度になるのがベスト。)
このやり方の良い点は、力の入れる方向が45度なので、下向きの力が逃げやすい点です。
着物を着ている場合とかにも汚れづらくてよいです。
悪い点は作用点(底面)から遠くを持つので墨のコントロールが難しい事です。出来るだけ底面に近い部分を指で支えた方がよいです。

固形墨を握って持つ方もおられますが、力が入り過ぎる上に、コントロールが難しくなるので、あまりお勧めできないです。
磨れない硯を使っていると、自然とそうなってしまうのかなぁ?って気がします。
固形墨を磨るのに、ちゃんとした硯であれば、力は要りません。(なので、1㎜浮かして磨ってください、と言っています)

硯の説明会で磨る実演実践を何度もしたことがありますが、力を入れている方だと、力を抜く様に言っても意外と出来ない方も多いです。指にも腕にも全身に力が入ってしまう様です。
癖がついている場合は、多少意識して実践する必要があります。